「ゆきむるぁああぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」





活をいれてやろうと、幸村の元へ足を運んだ信玄だったが、

あまりにもでかいキノコに足を止めた。



この先に幸村がいることはキノコがでかく、増えていることからわかる。


だが、このキノコをなぎ倒すのもいいが・・・怪しい色のオーラを纏っている。









「ふむ・・・ここまで来ると凄いものだの・・・・・・幸村!いるのだろう?」


「・・・・・・・お館様ぁぁああ・・・・・ほかっておいてくだされえぇえぇぇ・・・・・」




武士としては情けない、涙声がキノコの向こうから聞こえる。





「へこんでいる暇があったら、謝るなどしてこぬか、馬鹿者!!」




「そ、そうでござるな・・・!お館様、この幸村しばし出てまいりまする!!」


「うむ!」


幸村の声に覇気が戻った途端、キノコは怪しい胞子を止め縮み消滅した。





「ちゃん。」


「さ、すけさん・・・・どうして・・・」




佐助がのもとへ行ったとき、

はちょうど包みを抱えて店の裏手に回ろうとしていた時だった。



「何って迎えに?ちゃんこそ、何それ?」

「あ、これですか?試作品ですよ。今から渡しに行くんです。来ます?」

「んー、行こうかなー」





店の裏手に回り、その裏道を歩いていくと、城下から最も近い農村へと続く路があった。




「皆、出てきて大丈夫よ。佐助さんは悪い人じゃないから。」



すると草陰から十人ほどの子供が出てくる。

どの子も農民の子らしく、汚れていた。




「ちゃんと手、洗ってきたよね?」

「うん、洗ってきたよ!」


「いい子ね。はい、好きなの食べて?」




そう言って包みを開けると店には並んでいない菓子達が並んでいた。

菊や梅の花が元になっているものや、桜など様々に形彩られている。



「流石・・・」

「佐助さんもどうぞ?試作なので保証はしませんけれど。」



「ありがと。ねえ、この薄青のは何?」




佐助が指したのは白よりも少し青みがかったようなものだった。





「ゆきはな・・・・・・ほら、雪の日に降る結晶です。

私の好きな華なんです。まあ花とは言いがたいですけどね。」




きっと佐助さんは知らない。雪花の別名がであることを

母が私に残した唯一の贈り物。

母が愛した雪花と同じように・・・愛されて欲しいとの願いがこもった名。





「佐助さん、私は幸村さんに酷いことをしたのかもしれませんね。」



小さな溜息をついて、試作の残りを子供たちに持たせてやると、店へと続く路を歩き出す。

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