「ありえない・・・・本当にありえない・・・っ!!」



流石に苛立ちを隠せないは、

普段静かに歩く廊下に足音が響くことも気にしないで歩いていた。

普段20本は食べるから、と多めに50本作ったのに・・・


今日のは試作品で料理の上手い佐助さんに評価してもらうつもりだったのに・・・!!



量作った所為で、もう材料余ってないし、どうしようかな。

ああ、一月どうせ作らないなら丁度いいじゃない。


―帰ろう、赤鳳へ。



そうと決まれば、甘味作りの荷物取ってこよう。


荷物を取りに行けば、一人の女中が居た。




「あ、さん・・・?どうしたんです?」

「ちょっと、ね。一つ頼んでもいいですか?」


「ええ、構いませんよ。」




「幸村様が一月の間甘味を取らないように見張ってもらえますか?

ちょっと私は赤鳳に戻ってしまうので・・・」



女中は凄く驚いていた。


が戻るという事実と、幸村に甘味を与えるな、ということに。



是と言うのに躊躇いを持つ女中だったが、

「わかりました。責任持って見張りますわ。」と言ってくれた。



「それじゃあ、お願いします。また、会いましょう。」


その言葉を残すと、は荷物を持って上田城を出て城下町へと下りていった。




「にしても・・・一体何があったのかしら、さんがあんなに怒るなんて・・・

幸村様は何をしたんでしょう・・・。後で佐助様に聞いてから見張るべきかしら・・・」




この騒動に巻き込まれた女中もまた深い溜息を吐くことになった。







「由乃さーん」



赤鳳に帰ってきたは店の入り口で店主の名を呼ぶ。


「あれまぁ、どうしたんだい?佐助様と何かあったのかい?」

「佐助さんとは何もないよ。幸村さんとちょっとね。」

「・・・そう。まぁ、入っておいで。お茶にでもしようか。」



促されるままに、由乃の部屋に入り座る。



「で、一体どうしたんだい?」



「聞いて!幸村さん酷いんですよ!!

ほら、私が前から試作品で作ってたみたらし団子あるじゃないですか?

それを50本作ったのに、全部一人で食べちゃうんですよ?!

まだ試作品だから、料理の上手な佐助さんに食べてもらって味を聞きたかったのに!」



由乃はが甘味にかけている気持ちを理解しているから、怒っても仕方ないと思う。


が、それで出てくるは理解できなかった。




「それは、出てくるほどのことかい?」


「だって・・・それが一回ならまだしも・・・・毎日ですよ」


しゅん、と顔を俯かせるを見て、

真田幸村という立派な武士がいるという話が信じられなくなりそうだった。




多分、由乃も自分がそうなったら流石に耐え切れないだろうと思える。



「まぁ、いつまででもいいからゆっくりしていきな。部屋はいつものとこだから。」

「ありがとう、由乃さん〜〜〜っっ!!」




この時、由乃までもが気づかれないようにだが、溜息を吐いた。 


next