ダダダダッと凄い騒音を立てて向かってくるのは間違いなく、幸村のもの。



「止まってくれなきゃお団子あげませんよ」


そのまま突進されそうだったので、団子で釣ろうとした。

無謀かと思ったけど、あっさりと釣れた。


にしても見事な止まりっぷり。

言い終えたと同時にキキッと止まったんだから。


足の裏とか摩擦で凄いことになってそう・・・






「はい、幸村さん。お団子食べたかったら、

幸村さんの部屋の前の縁側までこれ運んでくださいね。

あ、途中で食べたらあげませんからね。私は片付けていくので、

佐助さんが行ったら食べていいですよ。」




そう言いながら、幸村の手に団子が積み重ねられた皿を乗せる。


「わ、わかったでござるよ!」

直ぐには食べれないことに少し残念そうにしたが、皿を持って縁側に向かっていった。









「佐助さん。居るんですよね・・・?」



そっと天井にむけて聞けば、佐助がひょっこりと顔を出した。

「あの、さ。俺は直ぐに行った方がいいわけ?」



多分、佐助の主のことを思えば直ぐにでも行って、食べていいよというべきかもしれないが、

それをしたならば、が来たころには団子が無いことが目に見えている。



「うーん・・・佐助さんにおまかせしますよ。」

「そう?じゃあ待ってようかな。旦那には悪いけど我慢を覚えてもらわなきゃ。」


「ふふ、そうですね。」




2人はまるで幸村の親のような会話をしている。

佐助は年上だから兎も角、

ほぼ同い年くらいのまでもがそのような会話をするのは、

幸村の子供っぽさを示すには十分だった。


ここに幸村が居ようなら

「二人して何を言うか!某はそこまで子供じゃない!」と否定しているだろう。


「さて、そろそろ私たちも行きましょうか・・・」


少し片付けに時間がかかってしまった、と少し急いで歩くのは彼女なりの優しさ。






縁側に辿り着いては言葉を失った。

もちろん、佐助も。


「・・・・・・・・幸村さん?」


いつもより声が低いに驚いて達を見た幸村の頬にはみたらしのタレ。


そして、幸村の身体の向こうには空になった皿。





「あ・・・・・・・・・・・ど、の・・・・」






幸村はを見たまま冷や汗を流す。


普段なら「仕方ないですね」と笑う彼女は笑みを浮かべているものの、

目が笑っていないし口角がぴくりと引きつっている。



「私、言いませんでしたっけ。佐助さんが来るまでは待ってくださいと。」


は笑みを浮かべたまま、幸村の目の前に座る。

次の瞬間にの両手は幸村の両頬を捉えていた。


掴むだけでなく、容赦なく横に引っぱり始める。




「そして、この口で了解の言葉を発しませんでしたか、真田源次郎幸村様?

それとも、武士はこの程度のことなら許されるのでしょうかね。

武士に二言は無いものだと思っていたの、 で す が !」




言うだけ言うと、手を放し立ち上がる。

そしてくるりと向きを変え立ち去ろうと歩を進め始める。


廊下の角を曲がろうというときにもう一度顔をこちらに向け、笑った。





「一月ほどは、真田様に甘味を作りませんし、甘味屋にも行かせません。

もちろん佐助さんにも作っていただかないので。佐助さん、いいですね?」


「あ・・・う、うん。」


「それでは。失礼します。」



その場を去ったと、残された幸村と佐助。







「佐助ぇぇぇえ〜・・・」

「ちょっと、情けない声出さないでよ。悪いけどさ、

旦那が悪いし、流石に助けないからね。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」



でも・・・ちゃんがあんなに怒るなんて珍しいなぁ・・・

あの敵討ち以来・・?それ以上・・・?

全く、世話の焼ける主だと深い溜息を吐いた。


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