「さーすーけーッ」

「あれ、ちゃんまだ居たんだ?珍しいね、残り?」


教室で旦那を待ってたら、不意に声が掛けられる。

それは俺と同じクラスで、旦那が珍しく仲が良くなった可愛い女の子のちゃん。


高校生でも少し幼い感じなちゃんは守ってあげたくなる存在。

それに、皆の好きな人。



旦那も、伊達の旦那も、あの生徒会長も留年馬鹿も、お祭り君も…数えれないけど、



皆が大切にしてる女の子。





「えへへ・・・ちょっと忘れ物をしてね。だから先生のプリント整理してたの。」

「それもめずらしー。何かあったの?忘れ物とか・・・」


「風邪ひいちゃって、少しボーっとしてたら・・・風邪なんてやだー。」



そう言われてみれば少し頬も熱を持ってるのかふんわり赤くて、

鼻も寒さも関係して赤い。




「もー、何やってんのさ。ほら、どうせカイロも持ってないんでしょ?」


カイロを渡してやると、よく分かるねって笑った。


だってすごく寒いって顔してるからね。




「風邪ひきは帰りましょうねー。それとも送っていこうか?」


「え、ゆっきー・・・」




どうやらちゃんは俺が旦那を待ってるのを知ってるらしい。

まぁ、旦那が話したんだろうけど。




「旦那は大丈夫だよ。ただ途中でエネルギーを蓄えれないだけだから。」



旦那を待つのは途中コンビニで肉まんとかを買うくらいだし、

別に問題ない気がする。



正直問題ない。むしろ一緒に帰るほうが俺の財布に問題だ。





「んー・・・でもゆっきーにも佐助にも迷惑かけちゃうから一人で帰るよ。

まだ明るいし・・・佐助にあったかいカイロ貰ったから。」



「そっか、あんまり無理しちゃ駄目だからね?」


「はーい。じゃあ佐助また明日ッ!」





















まだ、そのとき帰すんじゃなかった。


グランドを抜けて、校門を出て行くキミを3階の教室から見てた。





そして・・・出てすぐの交差点で追突事故が起きて、

衝突の勢いで飛んできた車にキミは巻き込まれた。




「ッ!!ちゃん!!」


走ってそのちゃんがいた場所に向かう。


どうして、どうしてッ

あと1分・・・いや10秒遅ければ巻き込まれなかったのに・・・!!



















俺が着いたときにはグランドにいた生徒も集まり始めていた。


そこにちゃんの姿を探す。



見つけたのは、車と壁の隙間で赤い水溜りに倒れた姿。


とりあえず、車の隙間から出さなければ。


その辺にいる生徒とかに手伝ってもらって車を動かす。

動かして急いで、ちゃんのとこへ行く。





「よかった、まだ生きてる・・・」


トクン、トクンとまだ心臓は動いている。


出血はしてるものの、腕や足であって頭は打ってないらしい。




それでも、刃物を入れたように切れている腕とか、

折れた衝撃で皮膚を突き破って顔を出す踝のところの骨とかが重症であることを示している。







まだ、殆どの奴らはこの事態を把握してないのか呆然としてる。

早く、保険医来いよなッ!と思ったが、今日は保険医が出張でいないと言っていた。


タイミング悪すぎだろ・・・。







そんなことを思いながらも、まず腕の出血を止めるために切れていない二の腕あたりにきつく布を巻く。


出血だけでも抑えないと、血が足りなくなって何れは、死ぬ。






自分に出来る応急手当をしてるうちに、煩いくらいの音が近づいてくる。


「どいてください!!」

集まった人間をどけて近づいてくる白い服に赤でラインの入った服。


それに同じような車。


ちゃんはその白いのに乗せられて病院へと向かう。



赤い回旋灯にキミは連れて行かれた。

(07.12.29)