*傷を癒してまた華は開く* あの後、本当に最後の1本を幸村が食べようと手を伸ばした瞬間、佐助がそれを奪った。 「旦那、俺様に1本も渡さないつもりだったの?」 「殿が持ってきたときに居なかったのがいけな・・・・・あ―――――っ!!」 幸村は反論し取り返そうと手を伸ばした瞬間に佐助が団子を食べた所為で、言葉を最後まで言い切らずに声を上げた。 佐助は、わなわなと震える幸村を見て見ぬふりをしてに「美味しかったよ。」と告げる。 「ありが「佐助ぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーっ!!」」 「ちょ、旦那待って!!ちゃん、ごめん!」 言葉を遮られ、幸村と佐助の鬼ごっこが始まったのを見て呆然とする。 たかが団子1本であそこまで怒れるのも凄いと思う。 「すまぬのぉ。」 「い、いえ・・・あの・・・一つ聞きたいのですが、私のような町人が普通に此処に居てもいいのでしょうか・・・?」 「そんな町人など気にしなくて良い。それに殿がいると幸村や佐助も喜ぶしのぉ。」 「そう、ですか。では、私は部屋に戻りますね。」 「うむ。もし何か幸村たちが迷惑をかけたら遠慮無く言ってくれ」 「はい」 は苦笑しつつ、団子の皿を片付けに行き、部屋へと戻った。 どうしてだろう。 何も仕事もしずに居るのに・・・誰も拒んだりしない。 寧ろ優しすぎるくらいだ。 ただボーっとしていると、襖の向こうに誰かがいるのがわかった。 「様、そろそろ包帯を替える時間ですが・・・」 「入って大丈夫ですよ。」 いつも親切に新たな包帯を持ってきて替えてくれる。 その女中は包帯を外すと、少し手を止めた。 「様・・・・申し上げにくいのですが・・・」 「何か・・・?」 「傷はほぼ治っているのですが、痕が薄く残って・・・・・」 ああ、傷跡残るんだ・・・ 「仕方・・・ないですよ・・・。さ、私は気にならないので替えちゃいましょう!」 出来る限り明るく振舞い、包帯を替えてもらう。 ここでしんみりしたら、また佐助様に何か言われてしまうのも困る。 この間謝られた時も、正直言って少し困った。 私を助けて、私の命を大切にすることを教えてくれたのにどうして謝るんだろう 実際、謝るべきは私のほうなのに。 心の中でそんなことを考えてた。 「終わりましたよ。それでは私はこれで」 「ありがとうございました。」 出て行く女中さんにお礼を言えば、綺麗な笑顔を返してくれた。 ・・・そういえば此処に来てから、ちゃんと笑えてない気がする。 笑っても苦笑いくらいだと思う。 「ダメダメだな・・・私。由乃さんが居たら怒られちゃう。」 軽く溜息を吐いて、廊下から庭を見ようかなと考えていると、その廊下からドタドタと音がした。 物凄い勢いで・・・走ってる? そっと襖を開けてみると、佐助さんが見えた。 「あ、ちゃんいいところに!!助けて!」 「え、あ、はい!」 しまった。不意に言われたからつい肯定してしまった。 あの勢いで真田様が走ってきたら・・・絶対に私、飛ばされるよ。 そんなことを思っている間にも佐助はの後ろに隠れ、幸村はの目の前で止まった。 あ、危ない・・・あと数センチでぶつかるところだった・・・ 「佐助!女子の後ろに隠れるなど卑怯ぞ!出て来い!」 「イヤだって!出てったら旦那、殴る気でしょ!?」 「当たり前だろう!!」 私を挟んで火花が散っている・・・ 怖い。本当に怖い。 でも佐助様につい助けてと言われ肯定したからには助けなきゃ・・・ 「あ、あの真田様?団子のことで怒ってらっしゃるのですよね?・・・」 「そうだ。殿!佐助を渡してくれぬか?」 「いや、でも・・・。じゃなくて、団子でしたらまた沢山作りますから、今日は勘弁してあげてください・・・」 「う・・・そういうことならば・・・・・・・」 やっと落ち着いた幸村は、「巻き込んですまない」と謝って何処かに去っていった。 「鬼事、お疲れ様です。」 「ホント・・・旦那ってばしつこいんだもん・・・。酷いよね、途中で謝っても許してくれないしさ!」 「佐助様は苦労人なのですね」 私は少しでも大丈夫なとこを見せようと、軽く笑った。(きちんと笑えてたかはわからないけど) ちゃんが笑ってくれるのは嬉しい。 けど、そんな辛そうな悲しい笑顔を見たいわけじゃない。 俺様が見たいのは・・・いつもの花みたいに綺麗に笑うちゃんなわけで・・・ 「さっきさ、聞こえちゃったんだ・・・傷のこと・・・ごめんね・・・」 「気にしないでくださいよ。あれは避けれなかった私がいけないんですから。」 「でもちゃんは女の子なんだよ!?」 「でも、普段は見えないから大丈夫なんです。あ、もう少しで治るらしいので、そしたら・・・」 私は赤鳳に帰ろう。 いつまでもお世話になりっぱなしなのはいけないから。 「赤鳳に帰るの?」 「ええ、そうしようかと・・・何もしないのに此処にいたらそのうち怒られそうだもの」 なんで帰るなんて言うの? 傷が治っても俺様の隣にいてよ。 やっぱり・・・好きな人は俺様じゃないから居られないわけ? 「怒られてもいい。俺様が守るから・・・だからずっと此処にいなよ。」 いつもの飄々とした言い方だったから冗談かと思い、顔を見たら凄く真面目な顔をしていた。 佐助様は本気で言ってるのかな? そうだとしたら・・・嬉しい。 「・・・ふふ、冗談・・・ですよね?いつもの」 「冗談なんかじゃないよ。真面目だけど?」 ああ、彼は本気で此処に居ていいと言ってくれるんだ。 私は馬鹿だから変に期待しちゃうよ? 期待、していいのかな? 「・・・・・・私、馬鹿だから誤解で期待しちゃってもいい?」 「何を・・・?」 「(これ言わせるの?恥ずかしいかも・・・)・・・・・佐助様も、好きでいてくれるんじゃないかなって。」 「期待していいよ。ちゃんの所為で忍のくせに好きになっちゃったんだからさ。 ねぇ、"も"ってことは俺様も期待しちゃっていいわけ?」 「どれだけでも、期待してください。私は・・・佐助様が好きです。」 「俺様もちゃんが好きだよ。」 何だ、もう両思いだったんだ。 嬉しい・・・ は佐助に抱きついた。 「佐助様!私、佐助様が団子を買いに来てくれたときから好きだったから凄く嬉しいです!」 今までの中でも一番綺麗な笑顔で笑えた。 私は・・・まだ此処に居てもいいんだ。 傷が癒えた日に私はもう一度、花のような笑顔を取り戻したんです。佐助様のお陰で。 (甘い華が九輪...)