*忍使いの荒い人のおかげで君と出会えた。* 全く人使いの荒いっていうか忍使いの荒い自分の主が嫌になる。 きっと本人は気にしていないのだろうけれども、毎日働いてるこっちの身にもなってほしいよね。 確かに俺様は主の言うことは聞くよ? でも毎日のように買出しさせないで欲しい。 しかもただが甘味のために。 事の始まりの一言はこうだ。 『佐助ー。某は団子が食べたいでござるよ!!』 それはもうキラキラと瞳を輝かせて子供みたいに言うのだ。 『そう?じゃあ城下町に行けばいいじゃないの』 『某はお館様に用事があるんでござるよ・・・・』 提案してやれば用事があるといい、しゅん。と小さく項垂れる。 『仕方ないなぁ。じゃあ戻ってくるまでに終わらせとくんだよ?』 『佐助!!約束だぞ!!』 『はいはい。旦那もちゃんとやってよ?』 仕方ないと引き受ければ、犬が尻尾を振っているような感じで喜んでいた。 思えばとことん主に甘いような気もしなくはない。 これだけ甘ければ文句は言えないなぁ。と苦笑して城下町へ向かって走る足の速度を落とした。 いつも主、幸村が好んでる店へ足を運んだ。 「いらっしゃい。あ、いつも買いに来てくれる人だね?ごめんよ、あの限定のはさっきの人で売れきれちまったんだよ」 「あー・・・じゃあどうしようかなー」 旦那が好んでるのは団子なのだが、この店が好きらしい。特に限定100本の特別みたらし団子が好きだとか。 流石に手ぶらで帰ったら旦那は落ち込んじゃうだろうなぁ。と思い他に何を買うかを考えていると 「みたらしが欲しいなら、この道を真っ直ぐ行ったところにある甘味屋『赤鳳』に行ってみなよ。 悔しいけど、あそこのみたらしは絶品だよ。まだ20にもならない子が作ってるのにねぇ」 ここらでも美味しいと言われる店の店主が言うくらいなのだからよほど美味しいのだろう。 それなら旦那も喜ぶだろうか? 「ありがとー」 「いやいや。でもたまにはこっちにも買いに来ておくれよ?さ、早く行きな。いつもの旦那が待ってるんだろ?」 「わかってるって。」 旦那も待ってるだろうから急いであげようかな。なんて思ったが、いつものお返しとして歩いて行くことにした。 甘味屋『赤鳳』はその名の通り赤い鳥が飾られていた。 「へぇ、こんなとこにあったなんて知らなかった・・・」 店の中は結構な客で賑わっていて、店の人が慌しく動いてるのが見えた。 佐助は少し人が少なくなったのを見て店に入る。 それでもまだ半分くらいはいたので賑やかなのには変わりは無い。 「いらっしゃいませ!!」 入って聞こえた明るい声のほうを向けば、自分の主と同じくらいの女性が居た。 ・・・・。 あー、なんていうかさ。ほら、たまに居るじゃない笑うと凄くキレイな人って・・・ 俺様、今思いっきりドキッvってしちゃったじゃないの え?女じゃないんだからって?そんなの関係ないよ? 「えっと、何にします?」 「じゃあ、みたらし20本。」 20本も頼んだら、女性はちょっと吃驚してた。 でも直ぐに満面の笑顔でありがとうございますって言うからまたドキッってした。 「はい。お待たせしました。」 「ありがとー」 お金を払って外に出ると後ろからさっきの女性が声をかけた。 「あ、あの!」 「ん?何か用?」 その女性は少し戸惑って袋を差し出した。 「さっき・・・団子を20本も買ってくださったので・・・その・・・お礼です・・・」 「え?」 「だ、だって初めて20本も買ってくださった方なんですよ・・・?だから、嬉しかったんですよ」 女性は少し頬を染めて恥ずかしそうに笑った。 くすくすと笑えばさらに頬を赤くして、少し俯く。 「面白いね、赤鳳の店の人って」 「そ、そんな!・・・・・・あの、名前聞いてもいいですか?覚えておきたいんです!」 ホント面白いなこの子。 なんか目が離せなくなりそうな感じがするんだよね 「いいよ。俺様は佐助。猿飛佐助って言うの。」 「猿飛様ですね?私はと言います。」 「ちゃんね。あ、別に佐助でいいからね?」 俺様が名前でいいって言うとちゃんは嬉しそうにまた笑った。 「じゃあ、佐助様!また、来てくださいね!!」 そう言っては店の中へと戻っていった。 佐助もいつもより時間がかかっているので少しだけ急いだ。 「旦那ー。お団子買ってきたよー」 「待っていたでござるよ!!」 城に戻って買ってきたことを告げれば幸村は走って来た。 廊下を走るのはやめなさいって何回言えばいいんだろう・・・・ 「あれ?佐助何かいいことでもあったのか?」 「そんなことないよ。はい、いつもの売り切れちゃってたから違う店で買ったんだけどね。」 包みを開けてみればいつもの団子とは少しタレが違うのか色が少し違っていた。 幸村がすぐに手にとり口に入れると、少し驚いて笑顔になって食べ始めた。 「佐助!これ何処の店の団子だ?凄くおいしいでござるよ!!」 「赤鳳っていう店だよ。じゃ、俺様も・・・」 そんなに美味しいのかと疑問に思ったけど、食べてみる方が早いので佐助も団子を口に運ぶ。 ・・・美味い。 今までのは醤油味でさっぱりしていたが、今回のは甘めでふんわりと柔らかく醤油の味がひろがる 確かに甘味好きな旦那が好む味だ。 「これからはこの店の団子を買うでござるよ!」 「旦那・・・わかったよ」 横を見れば幸村は笑顔で殆ど食べ終わっている。 俺様もちゃんに会いたいし、旦那もここの団子を気に入ったなら結構会えるかもなんて思った。 お礼でもらった包みの中は可愛らしい饅頭が入っていた。 でも店では見かけなかったから試作品らしい それは旦那と別れてから一人で食べたけど、団子よりも美味しかった。 (甘い華が一輪...)