「祭り、行こうか。」

「そうだね!」




ダミースマイリー!












ついに明日がお祭りだから、やっと街へ向かう。

必要なものを持って、お店をしっかりと閉めた。




「おにーさん!準備終わったよー?」

「って準備早くないか?お祭りだから、飾るんじゃないの?」

「だ、だって・・・もう、持ってないし・・・」



昔は持ってたけど、茶屋を始めてからいらなくなり、あげてしまった。


だから飾ろうにも飾れないということだ。

しかも恋人でもないのに、着飾る必要はないと思う。




「おいおい、さすがにお祭りなんだからさ・・・・よし!じゃあ街行ったら俺が買ってやるよ!」



「えぇっ?!別にこのまんまでいいってば!」

「だけどなー、もったいないだろ?祭りは華やかの方がいいぜ!」


「・・・・うん。じゃあ・・・街で何か・・・・ね。」




一歩も引いてくれないから、仕方なく了承して街へと向かった。






















歩きなれた街までの森も、一緒に歩く人がいると景色が違って見える。


それは慶次だからなのか、ただ二人だからなのかはわからない。








「・・・あのさ、こないだのおみざくらって何なんだい?」







「おみざくら?藤兵衛さんと話してたコトか・・・つまらない話だからね。

私があの茶屋を始める前にはね、草景(そうけい)っていう藤兵衛さんの息子がいて、草景と私は恋仲だったの。

でも、戦に巻き込まれて草景は怪我をしたんだ。それで逃げてあの場所まできたけど・・・

あの桜の元で死んだんだよ。おみざくらは、御身桜って書くんだけど・・・それは忘れないため。

私と藤兵衛さんが覚えているためのことなの。草景はあの桜に血を与え飾ってるんだよってね。」






今まで誰にも話せなかったのに、話せるなんて変なの・・・




「あ、おにーさんもこういう話あるんでしょ?聞いたことあるよ?

おにーさんが恋を勧めるのは自分と同じになってほしくないからだって。」








「あー、ねねのことかい?も話したんだから俺も話さないといけないね。

ねねって言うのは俺の初恋の人。秀吉の奥さんだったんだけど、すげー好きだった。

けど秀吉は、自分の弱さになるからって殺しちまったんだ。だから少しでもそういうのが減るといいだろ?」





普段はあんまり話したくない内容なのに、スラスラと言えるのが不思議だ。




「へぇ・・・結局、私たちは似たもの同士なのかも。」

「そうかもしれないなぁ」

























街に着いたのは太陽が沈む頃で、すぐに宿をとって休んだ。


祭りは凄い人だから、フラフラだと危ないんだって。




眠りから覚めた後もおにーさんに連れられていろいろ着物を買いに行った。

といっても選んだのも買ったのも、全ておにーさんだったけど。








「よし、さぁさぁ着替えて来いよ!」



「う、うん。」




一度宿に戻って、着替え始める。


おにーさんが買ってくれたのは、淡い若草色から桃色に変わっていくきれいなもの。

もうじき来る春を思い浮かべれる柔らかい色。それに・・・ちょうど御身桜の色。






久々に着飾ることになったから少し時間がかかったけれど、なるべく早く着替えた。




「おにーさん。着替えたよ。」

「おっ、見せてみなよ。」



ゆっくりと部屋から出れば、少し進んだところにおにーさんは居た。

「似合ってるねぇ。は柔らかい方が似合うんだな。さぁて、案内してやるよ!」

















祭りの会場は凄く、人が多くて賑やかだった。

店が繁盛したときとは比べ物にならないくらい。久しぶりで、見てるのでも楽しい。




「うわぁ・・・楽しそう」

「だろ?そうだ、もっと近くに行ってみようぜ!」




それからは、いろんな出店をみて、久しぶりに飾り物とか新しい紅を買ったりした。


「、そろそろ御輿来る頃だ。」



確かに賑やかさが増した気もする。それがだんだん近づくのもわかる。

通りのほうへと体を向ければ、視界の端に御輿が映った。



御輿を担ぐ集団が目の前を横切るのを見るのに、つい体を乗り出してしまう。





「すごい、すごいよ!!おにーさん、祭りってやっぱりすごいね!!ありがとう!」


「当たり前だって!なんたって祭りだからね!それに、やっと思いっきり笑ったしさ」



「え?私、今までそんな笑ってなかったっけ?笑ってたよ?」

「そうそう、何か企んでる笑顔だった。嘘つき。」


「・・・。お互い様に。おにーさんも、私を誰かと被せてたからね!おあいこだもん」





「気づいてた・・・?だってって、すげーねねと行動が似てたからさー。懐かしいんだって」








正直言って俺がねねと被せてたのは、最初は懐かしさだったけど、途中からは愛しさだって。言わないけどさ。



ホントはね、慶次にも笑えてないの知ってたんだ。まだ忘れられなかったから。でも、ちょっとは本音出したんだよ?

おにーさんのコト、嫌いじゃないし。







「うわー、そういうことは、おにーさんも仮面被っての笑顔だったんだ?」

「どうだろうね?と同じで、偽りの笑顔だったかも?」







ただ、私たちは笑った。理由は知らない。




まるで昔からの友達と笑うように・・・

まるで初めての他人と笑うように・・・

まるで愛し合う恋人と笑うように・・・




キミが気に入ってるんだ。ただそれだけ。







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一話で祭り仕上げるのキツ;;
なんとか終わり。友情で終わった!