「一体どうしたんだろな・・・」 「キッ?」 時忘れの花を愛したのは誰? 俺がこの茶屋に来てもう2週間近く。 祭りまではあと一週間。 あと一週間が俺がここに居られる時間。 だってそうだろ?お礼に祭りに連れて行ったら終わりだもんな。 それにしても、さいきんはなんかそわそわしてる。 祭りが近いからなのかもしれないけれど、落ち着きがない。 それをいうと俺も、もいつも落ち着きないけれど。 「それにしても暇だなぁ・・・」 ゴロリと縁側に横になる。 ちょうどこの縁側は南向きなので、日差しが暖かい。 冬でも昼寝ができそうだ―・・・ 目を閉じて肌で感じる季節。 そろそろ北の方は雪が降るんじゃないかと思った。 そんな中で僅かな春の匂い。 気になって横になってた身体を起こして、ふらりと外に出てみた。 春の匂いを探すと一本の木があって、その下にはがいた。 「何してんだ?」 「あれ、おにーさんどうしたの?」 「それは俺の言葉だって。こんな冬に木を見てどうし・・・・・・・・・・あ。」 笑いながら言ってみると、思いっきり睨まれた。(あれ、ってこんな子だったっけ?) 「・・・・これ、咲くの?」 「咲かないよ。」 睨まれたから言葉を変えると素っ気無い返事。 あーあ、怒らせちゃったよ・・・・いつもはどうしてたっけ?女の子が機嫌を損ねたときって。 「咲かないんだ、残念だねぇ。花見は出来ないんだ。騒げると思ったんだけどなぁ」 「・・・・・はぁぁ」 これでもか、と溜息を盛大にすると呆れた顔を向けてくる。 「結局それが目当てなんでしょ、桜はおまけで。」 「ははっ、ばれたら仕方ないね。」 「戻るよ・・・おにーさん。」 2人は店のほうに戻った。 もう少し、もう少し・・・・ 今はまだ先だけ。でも、もう少しで届くとこに来るんだ。 それから3日としないうちに、春の匂いは増した。 丁度その日は、の店にはかなりの人が来ているらしい。凄く賑やかだ。 「さーん、こっちに団子追加ー」 「はーい。ちょっと待ってくださいねー」 次から次へと集まる人の声と、パタパタと走る音。 そんなにも来て、何があったんだろう?と店を覗くと一面、人。 「すご・・・・」 「あ、おにーさん。ほら、桜がやっと咲いたんだよ。」 ふと指された指の先を見ると3日前咲かないって言ってた桜の木。 それが枝という枝に花をつけて咲き誇っている。 「・・・・うそつきだな、は。」 「そういうこというと、団子も酒もなしだよ。」 「まっ・・・・っ!!それは!!」 店の主と、店から出てきた男、慶次のやり取りを見て微笑ましそうにする人がいた。 もちろん微笑ましそうにする人がいるなら、冷やかしの人も居るわけだ。 「おっ、ついにちゃんも男持ちかい?」 「残念だ・・・俺の息子に頑張って欲しかったのに、なぁ?」 「そ、その話を振らないでください!」 皆が皆自由に話し、笑顔が溢れている。 慶次が好きな自由がそこには存在していた。 「徳さん・・・この人は単なる居候。今度の町の祭りの案内人だよ。」 けらけらと笑って会話に混じっていく。 「ほら、おにーさんも。」 いつもの出来事のように俺を呼んでくれるのは少なからず気持ちがよかった。 だから自由気侭に友達のような会話を皆で交わした。 太陽が沈む頃になって、やっと客は帰っていく。 時忘れの花を見に来て、楽しんで帰っていく。 「やっぱりは天邪鬼だなー。好きって言っちゃえばいいのに、歓迎するけど?」 「冗談でしょー。天邪鬼はおにーさんもだし。」 やっぱり似たもの同士なのかもしれない。 ちょっとだけ、好きになりそうで。 でも好きになるのはちょっと怖い。 だから友達のように、他人のように。 でも時にはそれ以上のように。 ------------------------------------------------------------ 過去に触れないで。と軽く拒絶してみる。 でもくっつくときに言えればいいよね。